書籍紹介
「量刑相場」 著:森炎 発行:幻冬舎新書
感想
刑事事件の量刑
事件には民事と刑事があり、このうち民事は主に金銭で解決し、刑事は財産刑と自由刑を科すことで解決します。
本書で取り扱うのは刑事事件です。財産刑と自由刑があるといいましたが、財産刑のほうが軽いわけではありません。さらに細分化され、刑が軽い順に以下のように区別されます。
科料…1万円未満の金額を国庫に納める刑
拘留…30日未満刑務所に収容される刑
罰金…1万円以上の金額を国庫に納める刑
禁固…労役を伴わず刑務所に収容される刑
懲役…労役を伴い刑務所に収容される刑
なお、最近の刑法改正で拘留と禁固が一体となり拘禁刑となったと報道がありました。現代の感覚からすると罰金額がいくらであろうと自由刑のほうが重いと思うので、自然な改正であると思います。
致傷と致死
事件などで、致傷という言葉を聞く機会がありましたが、その意味について検討することはこれまでありませんでした。文字通り、傷または死に到ったという意味です。致傷は単純に怪我を負わせたという意味ですが、致死と殺人は何が違うのでしょうか。それは故意か偶然かということで説明できると思います。殺意をもって被害者を殺めると、それは殺人です。一方被害者と喧嘩になって、こづいてしまった拍子に相手が川に転落、溺死してしまったなどという場合は致死となります。量刑としてはもちろん殺人のほうが重くなり、一人殺人の量刑相場は最大無期懲役の有期懲役である一方、傷害致死の量刑相場は3年以上の有期懲役となっており、10年以上の懲役判決が出ることは稀です。
ただし、特に殺人罪はその特性によって量刑相場は大きく変動します。まず一番量刑相場が小さいものは正当防衛・過剰防衛です。不審者が家に上がり込んできて、身の危険を感じたため殺害した例です。またDVを受けていた夫・妻を殺害した例も防衛に入ります。この場合、執行猶予はもちろん、刑の免除となる場合もあります。
対して、量刑相場が大きいものはストーカー殺人です。被害者を長期間心身にわたり苦しめたことや、計画的犯行にみられる被告の冷酷さが量刑に影響するようです。ストーカー殺人の場合、無期懲役となる判例も珍しくありません。
事件の分類
裁判員裁判で取り扱われる事件は、大きく分けて以下の10つに分類できます。これでほとんどの事件をカバーしています。
殺人事件
傷害致死事件
現住建造物放火事件
強盗致死傷事件
婦女暴行致死傷事件
通貨偽造事件
危険運転致死事件
保護責任者遺棄致死事件
身代金目的誘拐事件
覚せい剤取締法違反事件
量刑の決定
裁判員裁判制度下では、建前上は裁判員の自由意志に基づき量刑が決定されますが、その自由意志は過去の判例をもとに決められるため、実質的にはこれまでの判例から量刑の相場が構成されています。
量刑相場というものが法律で定められているわけではない点に注意が必要です。