書籍紹介
「弁護士のすゝめ」 著:宮島渉、多田猛 発行:民事法研究会
感想
この書籍の主題は、法科大学院はいいぞ!にまとめられます。21世紀における弁護士の現状とそれに対する改革提案、法科大学院の必要性が訴えられていました。
法科大学院について
私は、大変失礼ながら法科大学院は予備試験に受からなかった人が行くところだと思っていたので、根本の認識から変わりました。法科大学院は司法試験の試験勉強のみならず、第一線で活躍できる法曹を育成する機関であるとのことです。司法試験の内容だけでなく、授業では法医学、海外法などについても学ぶカリキュラムがあるようです。法科大学院は私の場合法学未履修のため3年、夜間だと4年通う必要がありますが、書籍を読んでその期間を費やす価値はなんだかありそうだぞと思いました。
しかし、実際問題として予備試験の受験者と法科大学院卒業生では、明確な差があるようです。まず司法試験の合格率に有意な差がみられます。予備試験組の司法試験合格率は実に9割を超えますが、法科大学院卒業生は6割ほどということです。書籍では、これは予備試験が司法試験に近い試験設計であり、法科大学院は司法試験以外の勉強もするから、仕方のないことであるという主張がなされていました。
しかし、司法試験に受からないと元も子もないような気もします。少なくとも予備試験組同様の合格率を維持できるほど司法試験対策に注力したうえで、一流の法曹を育てるための授業をアドバンスとして行った方がいいのではないかと思ってしまいます。また、いわゆる5大事務所では、予備試験組が就職に有利という風説がなされているが、面接段階で区別するようなことはないという記述がありました。
一方5大事務所の一角をなすTMI総合法律事務所の新入所員の割合は、予備試験組が半分を占めるとのことです。一概に大きな事務所が優秀とは全くいえませんが、多くの司法試験合格者にとって待遇面などで魅力的であるのは間違いないでしょう。
合格率の割合だけを問題とするのであれば、一つの改革案は予備試験の合格率を上げることだと思います。現在予備試験の合格率は4%ほどであり非常に狭き門となっています。年間15000名ほどの受験者に対し合格者が600名ほどです。この割合を10%ほどとし、予備試験組の母数を増やせば、司法試験の合格率は下がるはずです。その結果法科大学院ルートを選択する人も増えるのではないかと考えます。
弁護士は食えない?
2010年代、司法試験の合格率が非常に低迷した時期がありました。元々2000年代前半50%近くあった合格率は、2014年には24%となりました。
これは受験者の学力が低下したというよりは、合格者数そのものが減少したことが大きな原因です。この現象は意図的なものであり、弁護士の数を減らす方向にかじを取った結果になります。また弁護士に対するネガティブキャンペーンを実施した結果、司法試験の志願者数も大きく減少しました。しかし著者は、食えないことは全くないと主張しています。特に多田弁護士は、弁護士登録後すぐに独立開業という私から見ればかなり特殊なキャリアを歩んでおられますが、第一線で活動していらっしゃいます。
どちらかというと食えないのは司法試験の勉強期間と修習期間であり、それ以降は蛍雪に見合った対価を得られると信じていいようです。
読了後の心境の変化
私はやはり予備試験ルートが向いていると考えました。これまでの経験からしても、人に教えてもらう形式での授業はさっぱりでしたが、自学自習だけは人一倍得意でした。だから予備試験というのも安直ですが、博士課程をやりながら法科大学院というのは実際的にも制度的にも多分難しいため博士の間は予備試験勉強を頑張ってみようと思いました。しかし人の話を聞けないというのは短所としてもっとしっかり自覚した方がいいと思います。勉強だけなら別に苦労しませんが、社会に出て実務経験を積む際に人の話を聞けないというのは致命的だと思うからです。
書籍中盤の様々な弁護士のバックグラウンドとキャリアの話題は非常に刺激を受けました。私は就活を検討していたころも大手志向というのは全くなく、自分を必要とする場所で働きたいと常々考えていました。企業と事務所ですと大きくスケールが異なりますが、大手と中小という構造は変わらないと思います。現状トップのとこに入っても防御一方な気がして、トップを狙える位置にいるところに入る方が面白そうだなと考えています。